もともと私は17年間、教師をしていました。その頃は毎日忙しく過ごしていましたが、寺の住職というのは、忙しい時とそうでない時の差が極端なんですよ。ちょうど寺総代に「人生をより豊かにしてくれる、趣味を持てば・・・」と言われたこともあり水墨画を習いに行きました。ところが境内に咲く花を描くにも墨一色では表現するのはむずかしい。そこで墨と絵の具の両方で描く墨彩画を自己流で、はじめました。詩の方は教師の頃、色紙に言葉を描き卒業生への贈り物にしていた経験が生かされ、絵に合わせて詩を、詩に合わせて絵を描くようになりました。

   
   
   
 
  私は住職ですから、ただ墨彩画や詩を描くのではなく、悩みを抱える人たちが作品を見て人命の尊さを感じ、少しでも元気になっていただけたらと願っています。たとえば傷ついたり、辛い気持ちになったとき少し視点を変えるだけで、否定的な気持ちをプラスに変えることは可能です。また「あの苦しみがあったから、今のしあわせがある」と、思える日は必ず訪れる。このように私たちが人生を過ごしていくうえで大事なことは、心の持ち方ではないでしょうか。私がよく題材にする花はいつの日か必ず散りますが、散ってもその美しさを心の中に活かしてこそ本当の人生。私は常日頃「散る花を見て心に散らない花を咲かせたい」と思っています。これこそ人間らしい生き方なんですよ。
   
  「心に花を咲かせたい」との思いでつくられたカレンダー。やさしい花の絵とあたたかな言葉が、勇気や希望、元気を与えてくれる。  
 
   
 
  小籔氏は教員生活を経て「丹波あじさい寺」住職に。あじさいのシーズンには約2万人もの人が訪れる関西花の寺第一番札所として有名な寺だ。秋は美しい紅葉が楽しめる。  
 
 
   
   
 
  当初は描いた作品をお寺に飾っていたのですが、参ってこられた方に好評をいただくようになり、「一枚描いてください」と言われることが増えはじめました。それはとてもありがたいことですが、住職として絵を描く時間はなかなかとれない。そんなとき「印刷して皆さんに配られたらいかがですか」と檀家さんに言われ、本のように時間を費やしたり、本棚にしまわれることのない日めくりカレンダーをつくることにしたのです。
たとえば「踏まれてもへこたれないタンポポの明るさと強さを学びたい」という詩を見たら、今起きている問題や悩みに対しても、前向きに取り組もうという気持になるでしょう。意識しない人の心にもすっと言葉が届くのがカレンダーの最大の魅力ですね。
   
 
   
 
  ある日、境内で掃除をしていたら、ひとりのご婦人に「私、ご住職さまに助けていただきました」と言われました。しかしながら私はその方にお会いしたのは初めて。お話を聞くと、悩んでいたとき、日めくりに描かれていた私の詩を見て心が楽になり、うつから救われたとか。私は常日頃、悩んだり、落ち込んだり、苦しんだり、悲しんだり、そんな方々にむけた作品を描いていたので嬉しかったですね。これからも、いつまでも人様のお役に立つために、そのときどきにふさわしいメッセージを発信したい。昨年の東日本大震災では多くの人の価値観が変化したと言われていますが、結局、無事に、仲良くしていることが幸せだということに気づかれたのでしょう。 日めくりカレンダーを通じてそんな大切なことを日々確認していただけたら、とてもありがたく思います。    
 
 
   
 
  カレンダーの最終チェックは自然光のもと、全体を見渡しておこなうことが恒例になっている。  
 
   
 
   
 
 
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