【続編】特別対談!宇多先生と神野先生に聞きました。
【続編】特別対談!宇多先生と神野先生に聞きました。

このページでは、「俳句の日めくりカレンダー2024」の商品リーフレットに掲載しきれなかった対談の続きをご紹介しています。

■プロフィール:宇多喜代子
山口県生まれ。現代俳句協会特別顧問。「草樹」会員代表。令和元年度「文化功労者」に選出。
2019〜2023年版「俳句の日めくりカレンダー」監修。

■プロフィール:神野紗希
愛媛県生まれ。現代俳句協会常務理事。第11回桂信子賞受賞。聖心女子大学講師。日本経済新聞俳壇選者。
2024年版「俳句の日めくりカレンダー」監修。

とにかく暑かった今年の夏。俳句への影響は?

宇多:
今年の夏は、本当に暑かった。この猛暑でどんな句が生まれたか気になっています。「極暑」などの季語もありますが、この猛暑を表現できる季語がないのでは、と思うのです。

 
神野:
日経俳壇に寄せられた中に〈この暑さ鉄板焼きをするごとし 枝澤聖文(8/26掲載)〉という句がありました。
 

宇多:
いいですね。
 

神野:
いかなることがあっても詠める。決まりがないのが俳句ですね。新しい変化を受け入れて、時代と共にありたいですね。
 

宇多:
それにしても、今年は暑さの質が違った気がします。
 

神野:
たしかに、この暑さや豪雨の様子を見ていると、地球滅亡を体感する思いですね…
 

宇多:
子どもの頃、学校で毎日の気温を記録していたときに、30℃を超えたことをわざわざ残したことを覚えています。28℃くらいが当たり前でしたから、今の気温がどれだけ異常かわかります。個人の力ではどうにもならないようなことが出てこないか心配になります。
 

神野:
子どもがいると将来が心配になります。
これまでの言葉で足りないから、新しい言葉が生まれてくるのかもしれませんね。

子どもといえば…

神野:
息子が3、4才の頃に「冬だねえティラノサウルスみたいな風」と言ったことがありました。それを聞いて、「それはもう俳句だよ」と言ったことがあります。
 

宇多:
それは本人には変に意識させない方がいいよ。放っといた方がいい。でも書き留めておいて、大きくなったときに見せてあげたら、とてもいいと思います。親が自分のことをちゃんと見ていてくれた証しですから。
以前、西村和子さんが、ご自身の2人の子どもを歌った句を見て感激したことがあります。「泣きやみておたまじやくしのやうな眼よ」という句でした。
 

神野:
私も息子の泣きやんだ眼を見ると、その句を思い出します。他にも竹下しづの女とか、先達の子育ての俳句を見ると、孤独な気持ちが和らぎます。コロナ禍の子育ては本当に孤独でしたが、俳句を通して励まされました。どんな人でもどんな状況でも作れるのが、俳句の良さですね。一番身近な詩だと思います。
 

宇多:
日常から生まれた文芸が俳句ですからね。普通に生きてきた人たちがはぐくんだ定型詩。和歌は貴族の文芸でしたが、俳句は日常を歌った文芸です。皆が文字を読める、日本という国だから通用する俳句は、他の国にはない一つの文化ですね。
 

コロナ禍を経て、ふたたび俳句の楽しみを。

神野:
日めくりは自宅にあるものなので、毎日、俳句を見ることで世界を知ることができていいですね。忙しい人でも、一日一句、出会うことができる。「今日はこんな句か」と感じてもらうのに日めくりはとても良いツールだと思います。

 
宇多:
せっかく四季のある日本に生まれた文芸ですからね。俳句があれば、退屈することがありません。ボーッとしていることがない。歳をとっても豊かに生きることができます。それに、俳句には人と集まって句会で作る楽しさもありますし。昔の言葉でいうと「座」といいました。俳句は座の文芸です。
 

神野:
俳句は、短さが人を集わせるというか、短いからみんなでいろいろと解釈を伝え合う楽しさもあるんですよね。だから、コロナ禍の頃は、俳句について語る時間が持てなかったので苦しかったです。寂しい数年間でした。
 

宇多:
そうでしたね。句会とは別に、みんなで歩いて俳句を作るのもまた楽しいものです。同じ景色を見ていても、みんな違う句になりますから。
 

神野:
違う考え方に触れ合えますよね。短歌はダイアローグ、俳句はモノローグと言われますが、むしろ短歌は作品で完結しているのでモノローグ、俳句はダイアローグに近いように思います。
 

宇多:
俳句の場合は、たとえ一人でもいても心が賑やかです(笑)
 

神野:
まさにそうですね!
 

(新日本カレンダー)
宇多先生、神野先生、楽しく貴重なお話をありがとうございました。
 
読者の皆さま、最後までお読みいただき、ありがとうございます。2024年版の新しい日めくりカレンダーをよろしくお願いいたします!

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